新聞『ノイエスだより』発行の取り組み
〜 地域広報活動の発展のために 〜
 
発表者 小田切千波
 
 介護保険を目前として、今、全国的に老人関連施設を含め、社会福祉協議会、行政等で福祉分野の広報紙が数多く発行されています。山梨県老人保健施設協議会でも『YAMANASHI ろうけん』という広報紙を発行し、この7月に第3号が発行されました。ノイエスでも平成9年の7月から、『ノイエスだより』という新聞を発行し始めました。発行は毎月1回、この10月で第16号が発行され、今は11月発行の第17号に向けて最終的な作成を行っています。
 ノイエスで新聞を発行することになったのは、少しでも多くの方々にノイエスのことを知ってもらいたい。特に、歴史が浅く世間にその存在を知られていない老人保健施設のことを知っていただきたいと常々感じていたからです。県内にも、ここ数年でかなりの老健施設がでましたが、一般の家庭への情報は不足しており、老健施設が社会的にどこまでその役割を理解され、深く浸透しているとはまだまだいえない状態であるといえます。私自身も相談員をしていて、「いったいそこはどういった施設なのですか?」といった質問をよくされます。また、利用されている本人やご家族もきちんと理解して頂けていないこともあります。このような中で老健施設のことを知って頂くには、新聞を発行することが有効なのではないかと考えたのです。
 『ノイエスだより』の発行は5人の編集委員が中心となって行っています。毎月、月の初めに最新号が発行された直後編集会議を行い、次の新聞のレイアウトを作成します。『ノイエスだより』の記者は当然職員ですが、記事の書き手を割り振りします。それも、特定の職員が書くのではなく、看護・介護・事務・相談・厨房・リハビリなど編集委員の依頼に応じて、全職員が記事を書くことになっています。普段長い文章を書くことに慣れていない職員が多いので、依頼された職員は最初は狼狽しながら、そして悩みながら、それでも締切りを少し過ぎた頃には、なかなかのいい文章で記事を書き上げてくれています。『ノイエスだより』ももう1年以上発行していますので、その間職員の文章力もかなり上達してきています。自分の記事が活字になると、恥かしくもあり、誇らしくもあるといった心境でしょうか?
 発行部数は毎月おおよそ200部を越えます。編集会議を経て原稿依頼、締切り、そして月末にワープロで仕上げます。新聞といっても『ノイエスだより』の活字の大きさは12ポイントと大きめです。読みやすいようにと大きくしています。制作の方針としては、『読む』よりは『見る』ことを主体としています。そのため、活字ばかりではく写真をできるだけ多く載せるようにしています。印刷は現在はリソーの印刷機を使っていますが、もっと写真が綺麗に印刷できればと、不満が残っています。
 『ノイエスだより』を読んでいただく対象は、入所者、通所者、そのご家族そして職員が中心です。ですから、記事の内容はノイエスでの行事や利用者の生活、職員の活動などがメインになっています。その他には看護・介護・リハビリなどからの専門的な情報を提供したり、時節をテーマにして利用者の方に協力していただいたこともあります。今年の8月の14号では「戦争」をテーマにして、利用者の戦争体験をインタビューして記事にし、また女性の利用者に詩や俳句を書いていただきました。ここで紹介したいと思います。「戦いすんで ほっとして/赤子の寝顔に ひと雫/六月、主人は逝去/七月、女児出産/八月、終戦」「国のため 命捧げし/若者の/犠牲の上の 毎日を/心安けく 老い長らえて」以外なほどと言っては失礼になるでしょうがストレートに心を打つ作品で、あらためて利用者の方々の歴史を感じてしまいました。『ノイエスだより』の思わぬ副産物でもありました。
 こうして出来上がる『ノイエスだより』の評判はなかなか上々です。毎月、最新号が出る度に、「今月は、○○さんが記事を書いている。」「私の写真が載っている」など利用者の間でちょっとした話題になります。また、ご家族からは「ノイエスでの様子がよくわかる」と好評を頂いていると解釈しています。さらには、利用の希望で見学をされている方が、貼ってある『ノイエスだより』に目をとめることもあります。そういったときは『ノイエスだより』を見て頂きながら、ノイエスでの生活をお話しすることもあります。
 『ノイエスだより』の発行によって、今までよりもノイエスのことを理解して頂けるようになったと思いますし、また職員も書くことによって、仕事をふりかえることができ、自分自身の仕事に対する意識や見方が変わってきているともいえます。
 老人保健施設には広告規制があり、記事の内容については大袈裟な内容やアピールしすぎる記事は載せられませんので注意しています。広告ではなく、広報としてノイエスでの活動の様子を伝えていかなくてはならないのです。こういった制約の中で、『ノイエスだより』の役割はどうあるべきかが問題であり、3年目を迎える『ノイエスだより』の今後の課題であるといえます。
 今後の展開としては、現在は利用者の方々にも、ご家族にも同じ新聞を読んでいただいていますが、利用者に向けては施設内での生活や行事などをメインとした新聞を、ご家族に向けてはノイエスの活動と併せて、看護・介護など、福祉や医療の専門分野からのアドバイスや情報などを載せた新聞を作成し使い分けができるとよいが思っています。
 また、さらに一歩前進して、インターネットをも視野に入れていきたいと思っています。新聞ですとどうしても情報の一方通行になりがちですが、インターネットは双方向の通信手段として有効です。ノイエスの情報も提供する、それに対して受信側からもアドバイスや意見を聞かせていただくことができる。このような双方向の情報交換は介護の質的向上に大きく貢献すると思います。しかもこういったメディアでは、映像としてイメージ伝達の効果が大きく、今まで以上の情報を送り出すこともできます。マルチメディアを使いこなすにはそれなりの技術が必要となってきますので、今すぐ実現させていくことは困難ですが、今後の広報紙のありかたは、こういった新しい手段を取り入れて行くことが重要になってくると考えています。
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(H12.2.21 現在)
 あれから一年半、『ノイエスだより』も31号を数えるに至り、「ノイエスだより編集委員会」も、その後、「広報委員会」へと組織替えした。
 また、その後大きく変わったのは、印刷技術である。昨年5月、カラーのページプリンタを入手し、1枚あたりのコストは少し高くなったが、鮮明なカラー紙面を、大量にしかも短時間に作り出せるようになった。
 発行部数も、現在では300部程度と大幅に拡大してきて、思わぬ人から、思わぬ所で、「読みやすくて楽しみにしています。」とか、「○○さんって、結婚したんですね。」とか言われて驚くこともある。
 職員の記事アレルギーも少しは緩和され、臆せず書く文章の中にはなかなかの名文もある。

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